三橋ゆか里~未知への挑戦が成長への近道~【lampインタビュー】
魔法のランプがなくても、神様にお願いしなくても、願いは自分で叶えられる!
このコーナーでは、様々なジャンルで活躍する方たちに自身の“夢を叶える方法”についてお伺いします。
今回お話を聞くのは、映画『ソーシャル・ネットワーク』で字幕・吹き替え監修を務め、現在フリーでコンテンツの企画・編集、ライターなどをされている三橋ゆか里さん。IT業界をメインに国境を超えて活躍する三橋さんに、“夢”や仕事に対する思いなどを伺いました。
−−現在、フリーライターとして主にIT系の取材をされている三橋さんですが、ご自身がIT業界の仕事に携わるきっかけは何だったのでしょうか?
元々は出版社に入りたかったんですが、子供の頃7年ほどアメリカにいたので日本語と英語の両方が中途半端でした。そのせいで、出版関係は全滅してしまって……といっても、2〜3社しか受けていなかったので、そもそもなめていたのだと思います(笑)。それで、少しでも出版社と繋がるところがないか探していたら、雑誌を販売しているオンラインショップを見つけて、その会社のバイトを経て新卒として入社しました。
−−独立後はライターのお仕事を主にされていますが、そこに至るまでの経緯を教えてください
ベンチャーだった最初の会社を辞めてからは、いくつかの会社を転々としました。すでに出来上がった組織内で働くことにモチベーションを持てないでいたので、だんだん会社員に向いてないんじゃないかなーと思い始めて。で、「フリーになりたい」と上司にぼそっと言ったら、「翻訳の仕事だったら外に出してあげられる」って言ってくださって。その時は不安よりも新しいことへの好奇心の方が強かったので、思い切ってフリーになって、まずは翻訳の仕事1本から始めたんです。
それと同時に、当時人気になり始めていたTwitter上で、気になった海外の記事を日本語で要約してツイートするようになりました。そしたら、それを見ていた知人が「さかのぼって読めるから」とブログを始めるように勧めてくれて。その時立ち上げたのが、いまも続けている「TechDoll(テックドール)」というブログです。それを見た出版社さんやウェブ媒体の方が声をかけてくださるようになり、自然と書く仕事が増えていきました。
一番の人より、そこを目指して頑張る人を応援するのが好きなんです
−−ライターとして、スタートアップに注目するようになったきっかけは何でしょうか?
昔から、すでに一番の人よりも、そこを目指して頑張る人を応援するのが好きなんです。テレビをつけてスポーツの試合がやっていたら、必ず負けている方を応援しちゃうくらい(笑)。私自身、最初に勤めたのはベンチャー企業だったので、楽しいこともいっぱいあったけど大変なこともいっぱいありました。それでも、みんなで一緒に築いていくことの嬉しさや充実感を体験したので、“まだまだこれから”っていう人を応援したいという気持ちが強いんです。
あと、具体的なきっかけとしては、まだガラケーが主流だった頃に「Decolog(デコログ)」という携帯のブログサービスを取材させてもらったことがあり、記事を公開したらポジティブな反響がすごく多かったんです。だけど、それまでは私含め、ほとんどの人がそのサービスを知らなかった。その時に、新しい芽をもっと発掘したい! と思いました。
−−フリーのお仕事を始めた頃の自分にアドバイスしてあげるとするなら、何を伝えますか?
始めは、ブログ以外で自分の名前を出して何かを伝えたことがなかったので、言葉遣いや捉えられ方を心配していたんですけど、そこはそんなに心配しなくても大丈夫だよって言ってあげたい(笑)。根底に応援したいとかポジティブな気持ちや思いやりがあれば、それが記事にも自然と出て読者に伝わるのかなって。
あと、迷っていることも一つのフェーズだから、“無理に答えを出さなくても良い”と言ってあげたいです。何かの岐路に立たされたときって無理に結論を出そうとしちゃうんですけど、決めるべきときは自ずと決まるというか……直感的にわかるんですよね。「右だ! 左だ!」って。自分が決めたことは100パーセント自分の意思でしかないので、逃げ道も後悔もない。それで良い結果じゃなかったら、良くなるようにどうにかすればいいだけだから。
−−お話を聞いていると、とてもポジティブな印象を受けるのですが、今まででどんな時に落ち込んだりしたのでしょうか?
以前、会社のメルマガ担当をしていた時に、「テスト」っていう件名でお客さん全員に誤配信しちゃったことがあって。それがわかったときは「本当にやばい」って思ってへこみました(笑)。でも、育ってほしいという思いがあって社長も叱ってくれてるんだと思えたので、「よし、頑張らないと」って自分を奮い立たせられましたね。
あとは、フリーで仕事をし始めた時に、元売れっ子ライターさんで編集のプロの方にアドバイスをもらおうと、「私の文章、どう思いますか」って聞いたことがあったんです。そしたら、ストレートに「みっちゃんは、日本語がおかしい時がある」ってダメ出しをされたことがありました(笑)。だけど、その方から「僕は、文章が読みやすい作家さんの文章をそのまま写して練習してたよ」って言われて、すぐやってみたり。ダメ出しをされた瞬間はパンチを受けた気分ですけど、正直に言ってくださること自体が愛ですよね。だから、指摘されたことを改善するためのアクションにすぐ取りかかることで切り替えられますね。
とにかくやるっきゃないなって思いました
−−映画『ソーシャルネットワーク』の吹き替え・字幕監修をするようになったきっかけは何だったのでしょうか?
これは本当に縁でした。最初の会社で一緒にお仕事をした方が、一緒にやらない? と紹介してくださったんです。『ソーシャル・ネットワーク』はエンジニアが主人公のギークな映画で、且つ大学が舞台なのでネイティブな英語が伝わるようにしたいという意向がありました。一般の方が見てもそのスピード感にワクワクできて、IT業界で働く現役エンジニアさんが見ても「あるある!」ってなるような字幕・吹き替えを目指しました。
−−未知の分野だったはずの監修ですが、苦労した点はありますか?
まだ学生の頃に、映画の字幕翻訳にちょっぴり憧れて学校や説明会に行ってみたことがありました。でもそんなことはすっかり忘れていて、実際に映画の字幕監修のお仕事をやるなんて考えたこともありませんでした。初めてのことだし、自分にできるのか不安はありましたけど、そんなチャンスもめったにないので、とにかくやるっきゃないなって思いました。2人で監修したので心強かったですし。作業自体は思ったより地道で、映画を何度も観ながら違和感のある部分を見つけてはその表現について話し合って、より良いものに改善していくことの繰り返しでした。
三橋さんが字幕・翻訳監修をつとめた映画「ソーシャルネットワーク」
未知な部分や不安を感じない仕事は大きな成長には繋がらない
−−三橋さんの今後の夢を教えてください。
今やっていることはすごく好きだし、ずっと続けたいと思います。昔はライティングの幅を広げたいとか、IT以外の分野でも書きたい、なんて思ったこともありました。でも、やっぱりITとか、そこで新しいものを生み出そうとする人たちが好きなんですよね。だから応援したい。最近は海外のメディアに書くことも増えてきたので、ジャンルを広げるのではなくて、自分が得意とする1つの分野の中で、より広く伝えていきたいと思っています。
−−最後に、なにかに挑戦したくても一歩踏み出せないでいる女性のためにメッセージをお願いします
新しいことに挑戦するときに、自分にできるか不安に感じるのって誰でも同じだと思います。でも、既にやったことのあることや、できるとわかっていることをやっていても、今以上にはなれない。今より成長するためには、「自分にできるかな?」くらいの仕事やチャレンジに挑むしかないと思っています。映画の字幕監修の仕事も、未知の分野だったからこそ、お仕事を受けることで自分の成長に繋がるだろうと思うことができました。逆に言うと、未知な部分や不安を感じない仕事は、大きな成長には繋がらないと思っています。10%の伸びはあっても、30%、50%の成長はなくて。
最近も、とある海外の航空会社の機内誌に日本のIT業界について紹介する英語記事を書かせてもらいました。編集部の方が、海外のQ&Aサイトの「Quora」で私のことを見つけてくれて。旅行系は初めてだし、期日も超短くて大変でしたが、不安だから、大変だからという理由でNOというのはどうも嫌で。チャレンジが上手くいけば、またその次にステップアップできるし、仮に失敗してもそこから学べることが絶対にあるはず。これからも、今の自分より背伸びしたことに挑戦していきたいなと思います。
−−本日はありがとうございました!
【info】
三橋ゆか里
フリーITライター・編集者
1980年生まれ。小学6年生の頃から高校卒業までをNYで過ごす。大学卒業後ECサイト運営会社やウェブ制作会社などを経て、フリーランスライターとして独立。2010年公開の映画『ソーシャル・ネットワーク』の字幕・吹き替えの監修を担当。
Twitter:@yukari77
BLOG:「TechDoll(テックドール)」
[ライター/lamp編集部]
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