大人女子のための2分で読めるウェブマガジン美シャイ- Beautiful shining
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2016/12/29

藤生恭子~自らがコンテンツになる~【lampインタビュー】

魔法のランプがなくても、神様にお願いしなくても、願いは自分で叶えられる!
このコーナーでは、様々なジャンルで活躍する方たちに自身の“夢を叶える方法”についてお伺いします。
今回お話を聞くのは、過去にオリックス・バファローズの二軍の場内アナウンスを担当し、その声が「セクシーすぎる」と話題を呼んだフリーアナウンサーの藤生恭子さん。現在はアナウンススクールの講師もされている藤生さんにとっての、“夢”や仕事に対する思いなどを伺いました。

−−声のお仕事に興味を持たれたきっかけは何だったのでしょうか?

元々は単なる野球好きだったんですよ。出身が兵庫県伊丹市なんですけど、甲子園球場が近いんです。開催期間中は駅ホームの音楽までも高校野球の歌になって、ポスターがいっぱい貼られたり、坊主のお兄さんたちがたくさん歩いていたり。街全体が高校野球一色に染まるんですね。そんな街に生まれたおかげで、当たり前のように野球が好きになって、高校は母校が甲子園に出てほしい一心で茨城の学校に入学して、大学も野球が強いから駒沢大学に行って(笑)NHKのアナウンサーだった母の影響でアナウンスの仕事に興味を持ちながらも、野球関係の仕事にも就きたいなとぼんやり思っていた時に、ラジオパーソナリティーの募集に受かったのが始まりですね。それでラジオ番組をやっていたのですが、やっぱり野球に携わりたいと思い、ウグイス嬢という選択肢を見付けました。

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−−ウグイス嬢って、憧れはあってもなり方がわからない職業だと思うのですが、どのようになられたんですか?

普通の会社みたいに毎年入社試験があるわけでもないので、実際私もわからなかったんです。ただ、機会があった時にキャリアがないとすぐ入り込めないと思ったので、最初は連盟という連盟すべてに電話したり、ネットで調べて「やらせてください!」というメールをとにかく送ったり。それを繰り返すうちに、ボランティアとしていろんな所でアナウンスをさせてもらえました。

−−ボランティアからはじめられたんですね

大きい目標を叶えるのって一発ではできないので、プロ野球のアナウンサーになりたいと思ったら、草野球や少年野球でも良いから経験を一個一個積んでいこうと思ったんです。アナウンサー学校にも行っていないので、アナウンスの技術はラジオの先生や母に教え込まれましたね。目標のために何かをやった自分と、何もやらなかった自分を想像した時に、何もやらなかった自分は絶対後悔すると思うんです。

100通メールを送って1通しか返事をもらえなくても嬉しかった

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−−そういった苦労の中で、くじけなかったのはなぜだと思いますか

実は苦労って一度も思ったことがないんですよ。100通メールを送って1通しか返事をもらえなくても「一通もらえたやん!」ってめちゃめちゃ嬉しかったし、一つひとつ着実に前に進んでるっていう実感があって。ボランティアで四国のリーグまで自費でアナウンスしに行ってたこともあって、周りの人には「夜行バスで行って仕事して、めっちゃお金かかるし大変やね」って言われるんですけど、私自身はやっていることが自分にとってプラスになっているとしか思えないんで、「こんなのお金出してできるんだったらいくらでも出すわ」って感じで(笑)

−−実際にお仕事として始めてから理想と現実のギャップはありましたか?

高知県の独立リーグの球団で球団職員兼アナウンサーとして住み込んで働いた時も、オリックスに居た時もそうだったんですけど、アナウンス以外にもやることはたくさんあるんです。例えばイベントをするにも仕切りだけじゃなく、企画、印刷物の発注、ポップ制作、選手との打ち合わせ、チケット作り、運営まで。ほかにも選手の郵便物の管理をしたり、練習の時に水を持って行ったり。職員なんで毎日出勤するし、試合の時はスタジアムに行って、試合が無い時は事務所に居て。だけど、それも元々勉強として覚悟していたんで、「え!」というギャップはなかったですね。

−−ウグイス嬢というと華やかなイメージがありますが決してそれだけではないんですね

そうですね。よく試合も「一番良い特等席で野球見れていいな〜」って言われるんですけど、終始審判を見ているんで、プレーとか選手の姿はあんまり覚えてなくて。選手交代があったら放送しないといけないんでベンチもイニングごとに見ておかないといけないし、常に監督と審判が喋ってるのをチェックしているんですね。家で野球見ている時も、原監督が審判のところに出てきたのを見て、クセで「これピッチャー代わるで!」って言ってしまったことがあります(笑)

「オリックスのウグイス嬢めっちゃ笑かすねん」

−−今までで一番大変だったお仕事は何でしたか?

この前やらせて頂いたCM撮影ですかね。球場で聞こえる、いわゆるウグイス嬢的な「一番~センタ~」っていうあの独特のイントネーション、あれ実は放送室では普通に「一番、センター」って言っていて、球場のスピーカーから建物に反響してあんな風に聞こえるだけなんです。

−−そうなんですか! あえてそうやっているんだと思っていました……

スクールでもそこを勘違いしている子がいるので「真っすぐ普通に読んでね」って言ってるくらいなんです。でもそのCM撮影で、いつも通りのアナウンスをしたら「ウグイス嬢のあの感じでやって下さい」って制作の方からお願いされて(笑)普段私が生徒たちにだめって言ってるような読み方をしなきゃいけなかったので、それは苦労しました(笑)だけど、撮影の現場はすごく楽しかったですし、普段の仕事とはまた違った雰囲気の中でアナウンスをしたので、貴重な経験をさせていただいたと思います。

−−オリックスにおられた時の場内アナウンスが「セクシーすぎる」と話題になりましたが、そのアイディアはどのように生まれたのでしょうか?

初めはプロ野球のアナウンスがやりたいと思っていたんですが、いざ入ってみるとお客さんをいっぱい集めたいっていう気持ちが出てきたんです。ある日選手が「やっぱ1軍でやらなテンションあがらんわ」って言うんで「なんで?」って聞いたら、「お客さん少ないからテンションあがらへん」って言ってて。集客を増やして球団に利益をもたらし、選手にも良い環境でやってもらう。自分の中でこれが新たな目標になったんですよ。


▲動画「セクシー過ぎるオリックス2軍のウグイス嬢」

それで、自分も人を集めるコンテンツの一つになって、お客さんを一人でも二人でも集めようと思ったんです。ウグイス嬢っぽくないウグイス嬢をやって、「オリックスのウグイス嬢めっちゃ笑かすねん」って、野球に興味がない人も来てくれたら嬉しいなって。で、選手や監督、コーチのアドバイスをもらいながら私のアナウンスの特徴を強調していったら、テレビで「セクシーすぎる」とか特集してもらうようになったんです。最初は決してセクシーを目指してたのではなく、変わったやつをやりたかっただけなんですけどね。結果としてはアニメや声優ファンの方や、「野球見た事ないんですけどテレビ見て来ました」とか、野球場に初めて来る人たちが増えて、自分的にはやってよかったなって思っています。

−−そういった反響があるなかで、今仕事をする上で大切にしていることは何ですか

それぞれ自分の色があるのかもしれないけれど、それよりも求めてくれている人の満足のいく形を提供したいと思っていて。例えば「セクシーにやってよ」って言われたら全力でそれをやるし、「セクシーさ無しで」って言われたら全く無しでやるし、お客さんが求めてるものを完璧に提供するってことを心がけています。

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やれることじゃなく、やりたいことをやるための方法

−−何かに挑戦したいけれど、なかなか行動に移せない。そんなみなさんに、一歩踏み出すためのメッセージをお願いします

みなさん自分がやれることを探すと思うんですが、そうじゃなくて、やりたいことをやるための方法を探す。「これ無理やわ」って思うこともまずやってみて、もう無理っていう結果が明らかに出たら辞めたら良いだけで。それはスクールの生徒にも言っていますね。
それと、無理ってなった時にもう一つ大事なのが、切り替え。無理ってわかるとショック受ける人が多いんですけど、人生は時間が限られてるんで、すぐに次何やろって切り替えをする。私もへこむことはありますが、一人で考えると絶対落ちていってしまうんで、遠慮なく話したり聞き合える関係の人に話して、切り替えます。「聞いてや~!」「せやな~!」「ありがとう~!」みたいな(笑)私もただの野球ファンの状態で「プロ野球のアナウンスやりたい」って言ってた時は、まわりが「ただのファンやん、無理に決まってるやん」って言ってたんですけど、こうしてなれたんで。無理なことってほとんどないと思っています。

−−お仕事をされながらスクールの講師もされていますが、今後の展望や夢を教えてください

私自身は野球も野球以外の分野でも呼んでいただいたところにはとにかく行って、常にチャレンジし続けたいと思っています。あとはWBCとかで、英語と日本語とか、韓国語と日本語とか、大きな国際試合で両方のアナウンスを一人でしてみたいですね。なので今ちょこっと勉強はしているんですけど。もう一つは自分が教えた生徒たちが大舞台で活躍してくれる、いろんな現場に行ったら必ずうちのアナウンサーが居るっていうような、生徒たちがさらに上の舞台で活躍する姿を見たいと思っています。

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【info】
株式会社ベースボールプランニング
http://baseball-planning.com/

[ライター/木村衣里 カメラ/長橋諒]